当社は、業務の概念モデリングの経験と知見から、複式簿記の概念を会計の実績のみでなく業務の予定、実績に拡張した汎用的なデータモデル「TEA」を考案しました。
TEAは、米国会計仕訳・総勘定元帳のTransaction(取引)、Entry(仕訳記入)、Account(勘定)の頭文字をとってネーミングしたものです。
日本の会計では、取引の仕訳について勘定科目の増減を借方、貸方に分けて記載しますが、図1のとおり、米国会計仕訳では、勘定科目の増減をDebit(+)、Credit(―)として記載します。
図1 米国会計仕訳の例
TEAでは、会計取引の仕訳を業務に拡張し、業務を個々の作業の連鎖として捉え、
T : Transaction 作業
E : Entry 作業により資源の増減する量
A : Account 作業により増減する資源
として表現します。
TEAは、業務を2つの視点から捉えています。
TEAは、業務を、経営資源の変換による価値創造プロセスと捉え、表現します。原材料、部品を、技術者が機械を一定の時間作動させることにより製品を生産するように、業務を保有する資源(=インプット資源)を投入、活用し、新しい資源(=アウトプット資源)を産出する活動と捉えることができます。複式簿記で、取引を、貸方、借方の仕訳で勘定科目を金額表示で表現するように、TEAは、インプット資源(=資産の減少)とアウトプット資源(=資産の増加)のそれぞれの増減量(個数、重さ、長さ、時間、など)で業務を表現し記録します。
図2 TEAによる業務表現
業務は、作業者が業務の予定(指示)を見て、作業を実行し、業務の実績が記録されます。
業務の予定は、顧客からの注文や社内責任者からの指示に基づき作成、記録されます。
注文や指示を受け、あらかじめ作成された業務知識に問合せ、注文や指示で示されたアウトプット資源産出のための一連の作業ルールにより、業務実績データから必要なインプット資源と量を引当て、業務予定を作成します。
図3、図4で、業務予定データ、業務実績データが作成されるまでの流れ、業務ルールから業務予定データのイメージを記載しました。
業務知識への問合せや、作業展開し業務実績データから資源を引き当てる機能は、TEAを実装したシステムで開発されます。(当社製品「TEAplatform」では実装されています。)
図3 注文/指示から業務予定データ。業務実績データの作成まで
図4 TEAで記載した業務ルール、作業展開結果、業務予定データのイメージ
(実際には、業務ルール、作業展開結果は、言語や文で記載される。)
・業務の予定と将来の資源の残高の把握
業務の予定、将来の資源の増減と残高が把握でき、予定の在庫量など、在庫管理が精緻化します。
また、プロジェクト管理が精緻化します。資源が不足すれば業務が成り立たなくなり、余剰資源が発生すればコスト増になり、プロジェクトでのボトルネック発生リスクの把握や余剰資源の活用など、リスク管理や生産性の向上に役立ちます。
・多様な資源の管理
アウトプット資源、インプット資源、それぞれ、従来では管理できなかった多様な資源をTEAの構造で管理することが可能となります。
人や設備、器材、スペースの資源の使用可能な時間、稼働状況など把握できます。人についても、スキルを資源とすれば業務を実行するために必要なスキルを明確化すれば、より具体的な人材管理ができます。
多様な資源を必要とするプロジェクトやでは、その見積もりや資源の量に基づいたスケジュール作成や業務進捗管理などアウトプット資源をサービスとすれば、サービスに必要な人材や場所など、サービスの生産管理を目指すことができ、人材の生産性の把握にも活用できます。
・工程管理の精緻化
個々の作業を資源変換とし、工程ごとに多様な資源のインプット、アウトプット、時間が把握できることで工程管理が精緻化します。
活動基準原価やカーボンフットプリントなどの計算、算出に活用できます。
・個品管理、ライフサイクル管理、トレーサビリティ
資源を引当て、業務を予定し実行するため、レンタル、リース、保守など、資源を運用する業務での個品管理、ライフサイクル管理などに活用できます。
また、調達~生産~販売まで、各工程で投入された個々の資源や作業場所が特定でき、トレーサビリティが確保され、品質や生産性の高低の原因、問題発生の原因など、業務の改善やトラブル対応に役立ちます。
・変化、変更への対応
従来のシステムは、プログラムにロジックが隠ぺいされています。ビジネスや業務の変化、変更に対応するためには、プログラムやデータの追加、変更が発生し、プログラムとデータが蜜結合しているため、工数(時間とコスト)がかかります。
TEAは、業務知識として業務ルールを記述し、ロジックを分離しており、業務ルールの追加、変更で対応できます。工数の少なさもありますが、習熟すれば業務部門でも対応できます。
・システムの可視化
従来のシステムは、ビジネスや業務の変化、変更の対応により、プログラムやデータの追加、変更を重ね、複雑化し、ブラックボックス化が進みます。
TEAは、業務知識と業務を記録するデータが分離しており、業務を記録するデータは、対象となるすべての資源の増減とその時刻が記録されます。業務状況の把握と共有、問題の早期発見など、システムが可視化されます。
業務ルールをもとに作成される業務予定、業務予定をもとに業務実行され記録される業務実績、および予定と実績の差異が関係者で共有されることで、業務ルール改善につながります。