当社は、業務モデリングの経験と知見から、多種多様な業務を、複式簿記を拡張した汎用的データ構造で表現するデータモデル「TEA」を考案しました。
複式簿記は、その起源は諸説ありますが、15世紀末にイタリアの商人が出版した理論書により広まり、日本では、明治時代に福澤諭吉が米国の簿記教科書を翻訳し紹介してから普及しました。複式簿記が普及する以前の簿記としては、売上、売掛金、資金や商品の出し入れ、などを記録する台帳があり、江戸時代の日本では、売掛先と売掛金を管理する大福帳などがあります。
台帳がお金やモノを特定し、その増減を記録、管理してきたことに対し、複式簿記は、取引そのものを記録します。
取引には、取引の原因(資産の増加)と結果(資産の減少、負債の増加)の二面性があります。商品の売買には、商品を売って得たお金の増加(資産の増加)と売った商品の減少(資産の減少)がありますし、借入については借りたお金の増加(資産の増加)と借入金の増加(負債の増加)があります。
複式簿記は、この取引の二面性に着目し、取引の原因(資産の増加、負債の減少)を借方、取引の結果(資産の減少、負債の増加)を貸方とし、管理対象とする資産や負債などを勘定科目として定義します。勘定科目とその増減する金額をそれぞれ、借方、貸方に取引発生時刻とともに記録することで、取引そのものを記録します。
取引を借方、貸方に勘定科目の金額の増減を記録することで、ある時点での勘定科目の残高=財政状態が把握されるとともに、ある期間の勘定科目の増減の集計により損益が把握され、貸借対照表、損益計算書として作成されます。
TEAは、お金=勘定科目の側面だけではなく、業務をヒトやモノなどの経営資源全般の増減を扱うように複式簿記を拡張したものです。
業務を借方、貸方に振り分けた資源の増減とする複式簿記構造で表現することで、勘定科目だけでなく、管理する資源の残高、生産量などを把握します。業務を経営資源の価値の変換の連続として捉え直すことを可能にします。
TEAは、米国会計仕訳・総勘定元帳のTransaction(取引)、Entry(仕訳記入)、Account(勘定)の頭文字をとってネーミングしたものです。
業務を、要求があった商品やサービスの提供、作成指示のあった成果物などを生産するために、調達する資源(インプット資源)を活用することで、新しい資源(アウトプット資源)を生み出す活動と捉え直すことができます。
複式簿記で、取引を貸方、借方の仕訳で表現するように、TEAは、インプット資源(資産の減少)とアウトプット資源(資産の増加)で業務を表現します。
・業務の予定/将来の資源の把握
業務の予定および実績が、資源の増減と残高で把握できることで、PDCAによる業務改善、スキルの向上などにつながります。
・多様な資源の管理
アウトプット資源、インプット資源、それぞれ、多様な資源をTEAの構造で管理することが可能となります。
人や設備、器材、スペースの資源の稼働/使用可能な時間、多様/複雑な工程が管理可能となることで、具体的な課題が明らかになり、生産性の向上、業務の改善が図られます。
・工程管理の精緻化
多様な資源状況を把握することで、従来管理することができなかった中間の成果物が合理的に管理でき、それら成果物をアウトプット、インプットとする工程も管理でき、工程管理が精緻化します。
また、工程ごとに多様な資源のインプット、アウトプットが把握できることで、原価やカーボンフットプリントなどの計算、算出がしやすくなります。
業務の捉え方について、従来のプロセス中心のシステムとTEAのシステムとの比較を図3に示しました。
TEAは、汎用的なデータ構造により業務ルールもしくはシステム変更を行うことで変化への対応がしやすくなります。